まだまだ続く村上春樹読み直しシリーズ。
僕がこの作品を最初に読んだのは学生時代、彼女の部屋の本棚にみつけて、その彼女はそんなに読書が好きな人ではなかったけど珍しいな、と思いながら手に取ったのがきっかけだった。
そういえば僕がつき合う女性はみんな村上春樹の著作が本棚にあって、自分で買うことなく彼の本を読んでた学生時代だったなあ。
と書きつつ、その頃のことを平板な情景としか懐かしめないのは村上春樹効果なのかな、それとも情緒が欠落してきたからかな。
なんて前置きはさておき『
羊をめぐる冒険』。
いま読んでもすごくおもしろかった。
唐突に彼女を失い、仕事を失い、時間を失い、友人を失った「僕」の気分と、この「冒険」が困難の克服と成長を伴わない平板さと、物語の中の要素の唐突に湧き出し消えていく感覚がいまの僕にグッときた。
たぶん、最初に読んだ頃の僕の軋みの感覚が遠いものになってしまったいまだからこんな風にグッときたのかもなあって感じ。
いや軋みはいまも僕の中に確実に大きく存在するんだけど、軋みへの抗い方のスタンスが変わってきたからかもしれない。
その僕の変化は良いことなのか悪いことなのかいまはわからないけど。
それとこの作品をいまもおもしろく読めることにホッとした気がする。
なんでかはいろいろ考えてみることにしよう。
とにかく好きな作品です。
あ、一応この作品は『
風の歌を聴け』、『
1973年のピンボール』に続く三部作(その後に続く『
ダンス・ダンス・ダンス』を入れれば四部作)なんだけど、この作品単体でもおもしろく読めると思います。
興味があれば是非。
羊をめぐる冒険〈上〉村上 春樹
羊をめぐる冒険〈下〉村上 春樹

posted by talc at 22:59
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